佐潟の植生は,潟周辺の湿地部は,主としてヨシ群落で占められていますが,下潟には,マコモ群落やヒメガマ群落が,上潟には,ヤナギ群落やショウブ群落が見られるなど,植物相に違いが見受けられます。また,湖面部分についても,下潟では,ハス群落が一面に広がっていますが,上潟では,ヒシ群落でおおわれています。
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| ミズアオイ |
これまでの資料から,合計95科465種が確認されていますが,このうち水辺に特徴的な水生植物については,抽水植物23種,浮葉植物5種,沈水植物7種,浮水植物2種,その他の湿生植物15種の合計52種が確認されています。しかし,近年の調査では,特に沈水植物や浮葉植物の減少が目立っており,潟の水質の悪化が懸念されています。
佐潟で注目される植物としては,全国的に絶滅が心配されているデンジソウ,オニバス,ミズアオイをはじめ,ハンゲショウ,サデクサ,ヤナギトラノオなどの貴重な湿生植物があります。これらは,佐潟の湿地としての自然の豊かさを示す指標でもありますが,近年,デンジソウは佐潟では野生絶滅したのではないかといわれています。
木々のにぎわい
春は,潟周辺の木々がにぎわいを見せるときです。タチヤナギ,オニグルミなどの落葉小高木やウツギ,ニワトコ,ノイバラなどの落葉低木掛が花をつけます。
湖面の彩り
潟の夏は,植物にとっては,一年で最もにぎやかな季節です。
湖面には,ハス,コウホネ,ミズアオイ,ヒシなどが咲き誇り,緑のジュウタンのところどころにピンク,黄色,青紫色,白色の刺繍が施され,華やかな夏を演出しています。
湖畔では,さまざまな湿生植物が彩りを添えています。
移りゆく季節
夏の花々たちがまだ多く見られる初秋。
でも植物たちはいち早く移りゆく季節を感じ取り,少しずつその姿をかえていきます。湖面では,ハスにかわって,オニバスが花をつけ,湖畔には,ヨシやカヤツリグサの仲間がひっそりと咲いています。また,周辺の湿地では,サデクサをはじめとした湿生植物が淡いピンクの彩りを添えています。
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| 冬の佐潟 |
佐潟は,ガンカモ類の飛来地として一般に知られていますが,周辺に畑地や林があることから,鳥類相は比較的豊富です。これまでの資料から17目37科157種の鳥類が確認されていますが,このうち水辺性鳥類(水禽類やカワセミ,セキレイ,オオヨシキリ)が73種と全体の46%を占め,これ以外にも,ワシタカ類が14種出現しているほか,ヨシ原で越冬するアオジ, オオジュリンやヒヨドリ,スズメのように人家周辺に生息する種などが出現しています。 水禽類の中では,ガンカモ類,シギチドリ類,サギ類などが多く,これらが佐潟の鳥相を特徴づけています。さらに,シギチドリ類の大半が,移動の際に佐潟周辺水域へ短期間立ち寄って行くのに対し,ガンカモ類は越冬地として長期間滞在しており,ヒシクイ,マガン,ハクチョウ類などの大型水禽類が多数とどまっていることに特色があります。
佐潟の鳥類の種類数は,繁殖期よりも冬期に多くなる傾向があります。これは,個体数の上から見るとさらに顕著に現れます。鳥類の個体数の変動は,主にカモ類を中心とした水禽類の飛来数に左右されますが,特にカモ類の飛来数は,天候によってもかなりの影響を受けます。一般に悪天候時に飛来数が急上昇することから,佐潟は,悪天候時には,カモ類の避難場所として利用されていると推測されます。
ヨシ原の主
ヨシ原には,毎年多くの鳥がやってきます。
春のヨシ原の主は,オオヨシキリです。けたたましい鳴き声が,いたるところで聞かれます。この時期,オオヨシキリは,佐潟全域のヨシ原で繁殖を開始します。
一方,秋風が吹く頃になると,オオヨシキリにかわって,カシラダカやオオジュリンが越冬のためにやってきます。このように,ヨシ原は,鳥たちにとって,大切な生息場所となっています。
潟の狩人
夏は,水鳥の種類も数も最も少なくなる時期です。そんななかで,潟の狩人は,わがもの顔で振る舞います。
湖面では,ダイサギやチュウサギなどのサギ類が盛んに餌をとっています。上佐潟と本潟をつなぐ水路付近では,カワセミがヤナギの小枝にとまって餌をねらっています。
カラフルな色
秋から冬にかけて,佐潟には,多くのカモ類がやってきます。
カモ類のオスは,一般に頭の部分の色や模様が派手です。緑色や茶色,黄色の冠をいただいているもの,仮面のような模様のあるものなど。
また,眼の色もさまざまで,赤色,黄色,緑色など,実にカラフルです。
そんな中で,頭の色が白く,眼の周りが黒いパンダのような顔のミコアイサが異彩をはなっています。
水鳥の楽園
佐潟の冬は,水鳥たちの楽園です。秋のカモ類に続いて,オオハクチョウ,コハクチョウ,マガン,ヒシクイなどの大型の水鳥も多数渡ってきます。さらに,上空には,カモをねらうワシやタカなどの猛禽類が時々姿を見せます。これらは,主に潟を餌場として利用しているのです。
潟は,水鳥たちにとっては,一年中で最もにぎやかな季節となります。
自然を知るためには,自然とふれあうことが大切です。
自然は必ずしも美しくはありません。楽しくもありません。佐潟のハスの華を見ればわたしたちはすばらしいと感じます。白鳥の姿を美しいと思います。また,小鳥のうつくしいさえずりを開くと心がなごみます。
しかし,花が咲くのは種子をつくり子孫を残すためです。鳥がさえずるのは,メスを呼び寄せたり,なわばりを主張するためです。生物が生きていくために必要な営みを行っているだけなのです。
わたしたちは,多くのことを自然に期待しています。自然はわたしたちにもっと美しいものや楽しいものをサービスしてくれると思っています。わたしたちは,自然を愛し,より便利に自然にふれあえるようさまざまな開発をしてきました。多くの観光道路が山はだを削ってつくられてきました。鑑賞の妨げになるような雑草や薮は苅り払われてしまいます。このような人間の都合によって着飾った自然には,無理がかかっています。自然破壊を伴っているということです。
みんな自然を愛する気持ちをもっているのに,そのことがかえって自然を傷つけているのです。わたしたちは,知らず知らずのうちに自然は人間が鑑賞するためにあるというわがままな感覚をもってしまったのです。
しかし,自然は人間を楽しませるためにあるのではありません。わたしたちは,もう一度,原点に立ち返り,自然を見つめ直す必要があります。自然を傷つけずに自然を楽しむためには,もっとわたしたちの方から自然に歩み寄る必要があるのではないでしょうか。自然はすばらしいことばかりではありません。カやクモ,ダニ,アブなどいやな虫はいくらでもいます。薮の中を歩けばノイバラのトゲで傷だらけになるかもしれません。湿地では,長靴が必要なところもあるでしょう。泥だらけになることも覚悟しなければなりません。
自然と親しむとは,そういう自然のいやな面もあることを含めて愛好するのでなければ,それは人間の思い上がりというものです。
自然,それ自体が美しいのではありません。「美しい」と感じるのは,わたしたちの感性なのです。